試験合格後の流れと実際の仕事内容
公開日: |更新日:
公認会計士は、合格率が低く資格を取得するだけでも超難関の資格です。しかし、この資格を取得していれば、仕事で困ることはありません。必要な仕事なので、需要があり資格を取得しているということだけでも、将来のキャリアアップにつながります。しかし、資格を取得していればすぐに公認会計士として働けるということではありません。資格取得後にも様々な難関が待ち受けています。それらを突破してはじめて公認会計士として働くことが出来ます。そこで、ここでは試験に合格してから公認会計士になるための要件と仕事内容について解説しています。
試験合格後、公認会計士になるための4ステップ
先ほど冒頭でも記したように、公認会計士として登録を受けるためには単に試験に合格すればよいわけではありません。次の要件を満たして初めて公認会計士として仕事が可能になります。なぜ、他の資格と異なり試験後にもさらなる条件が生じているのでしょうか。運転免許を取得した人であればわかるかもしれませんが、免許を取得した直後の運転は不安です。実際の道路で走るといっても、教習で習っていないことに遭遇したりして不安になるかもしれません。それを知らせるために初心者マークを車につけることで、1年間この自動車の運転手は初心者だから配慮してあげようと周りは理解してくれます。このような制度だと思ってください。
公認会計士は知識だけで仕事ができるということではありません。知識よりも大切なのが経験です。経験がなければ、公認会計士に要求される数多くの仕事をこなすことが出来ないからです。試験合格後には、実績を積むための研修期間だと思っても良いかもしれません。では、実際にどのようなことが必要なのでしょうか。
1.実務要件2年間
公認会計士名簿に登録するための要件として“業務補助又は実務従事の期間が通算して2年以上である者”というものがあります。
業務補助とは、公認会計士や監査法人を補助する業務補助、もしくは財務に関する監査、分析その他の実務に従事する実務従事のことです。
監査法人に勤務すれば確実ですが、近年は実務要件は緩和されていて、一般の会社の財務業務や銀行業務の中で記帳だけでなく財務分析業務に従事することでも要件を満たせます。
2.補習所通学3年
公認会計士になるためには試験合格後に原則3年間の補習所通学が必要で基本は監査実務をするための補習となります。
これは日本公認会計士協会の講義で270単位以上、考査が10回、レポートが6回あります。実務要件2年をクリアしている人は3年ではなく1年や2年に短縮することが可能です。
土曜日コースやeラーニングだけで単位を取得することができますが、かなりのハードスケジュールになることは間違いありません。必要な単位数を取得しないと、修了考査を受験することはできません。
3.修了考査合格
修了考査とは実務補習所の卒業試験に相当するもので、最終年次の12月に行われます。公認会計士試験と違って補習所通学の成果を確認するためのものなので合格率もそれほど厳しいものではありませんが油断は禁物です。しかし、資格試験よりかは合格率が高くしっかり講義の内容を理解していれば、必ず合格出来ます。講義では、試験対策のポイントを詳しく教えてくれますし、先輩の公認会計士にアドバイスを求めるのも良いでしょう。
試験科目は会計に関する議論及び実務、監査に関する議論及び実務、税に関する議論及び実務、経営に関する議論及び実務、公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理の5科目です。
4.登録手続き
実務2年間と補習所通学の要件をクリアして修了考査に合格すると公認会計士の登録手続きが可能になります。試験合格後の最終段階と考えてください。
公認会計士となる資格があることを証明する書類を添付して登録申請書に記入の上、日本公認会計士協会に提出します。登録に必要なのは、業務補助等の報告書受理番号通知書の交付のために作成します。この書類には、書式が決まっており、それに沿ったものを作成しなくてはいけません。おおまかに紹介すると、実務経験の会社での労働期間、従事した法人がいかような組織であったのか。という簡単な概要を作成しなくてはいけません。この際、会社の組織図も正確に作成しないといけないので、細かい配慮が必要です。もちろん、この書類に不備があると交付されることはないので気をつけましょう。登録手続きは通常1~2ヶ月程度で完了し、晴れて公認会計士になることができます。
公認会計士の4つの仕事内容
公認会計士の仕事内容は、大別すると以下の4つになります。
監査業務
監査業務は、公認会計士にとって、大切な仕事でもありますが、かなりの労力を必要とします。公認会計士だけが独占的に担当できる仕事が監査業務です。
これは、企業が作った損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を、第三者である公認会計士がチェックするというものです。膨大な量の書類をチェックするので、かなりの集中力が必要です。また、企業の監査をする場合、オフィスに持ち帰るというよりも、取引先の企業が自分自身の働く場所になります。また、繁忙期は、決算期です。通常は、書類をチェックするだけで定時に帰宅することが可能ですが、決算期になると、様々な財務表をチェックし間違っている点がないかをチェックしなくてはいけません。上場企業ではこうした決算書類を公開していて、それらが正しいことを証明するために、公認会計士が監査報告書を作るのです。
上場企業の監査業務では、規模も大きいため、複数の公認会計士が在籍する監査法人が担当します。株主などのステークホルダーに間違った情報を与えて、損失を被ることがないようにする、社会的影響の大きな仕事といえます。
また、ここ最近では監査の方法が少しずつ変化しています。ここ数年企業による不正・不祥事などで発覚した際、企業にとって大ダメージを与えてしまう場合が多く見られます。これらの不正を未然に防ぐ役割も監査業務にはあります。不正を推し進めている場合は、発覚しても止めることが難しいかもしれませんが、その多くが、一部の人間が勝手にやってしまうケースがあります。この不正を財務表から見破ることが出来るので、第三者の立場として、このようなトラブルを防ぐ大切な役割も担当します。
このような点を見れば、かなり重要な仕事であると言えます。また、監査は大企業だけではありません。中小企業の監査をする場合があります。大企業の場合と異なり、中小企業の監査は、二人三脚で行うイメージといっても良いでしょう。会社を成長させる手助けも時にはします。地域貢献をしたいと考えている人は、中小企業の方が良いと言えるでしょう。
また、監査業務に慣れてくると、監査法人を立ち上げる場合があります。監査法人は、公認会計士が5人以上いないと設立することが出来ないので、ハードルは高くなります。しかし、仲間と協力して設立しているケースもあるので、将来的に独立を考えても良いかもしれません。
税務業務
企業などの税務書類の作成や申告手続きを行ったり、税務に関する相談に応じたりします。
税務業務は税理士の仕事でもありますが、公認会計士の資格があれば、税理士業務もできるわけです。税務については、企業など法人だけでなく、個人のクライアントも見込めます。
税理士の資格は、公認会計士よりもハードルが低い資格になるため、公認会計士の資格を持っている人の方が、企業にとっては人気です。これは、ただ資格が難しいからということではありません。世界基準で考えると、税理士という資格は存在していない先進国がほとんどで、税理士の仕事を公認会計士が担っています。そのため、外資系企業では、税理士ではなく公認会計士に仕事をお願いする。という場合も考えられます。
会計業務
経理全般から税務を除いたものが会計業務となります。財務諸表など決算書類を作成したり、会計や財務全般の指導やアドバイスをします。
コンサルティング業務
会計・税務関連だけでなく、企業の経営全般に対するコンサルティングをしている公認会計士もいます。コンサルティングが出来るのは、公認会計士が数字に強いからです。会社の財政状況を把握していることで、会社に的確なアドバイスをすることが出来ます。会社が成長するためにはどのような戦略必要なのかを提案して、その提案次第で成長するのでやりがいがあります。しかし、会社のコンサルティングをするということは、多くの人を巻き込むことになるので、常に最善策を考えないといけないプレッシャーもあります。
株式公開のコンサルティングやシステムコンサルティングなど、対応範囲も幅広く、ビジネス規模も大きな業務です。
まとめ
公認会計士は、資格を取得して1人前として仕事を始めるまでにかなりの期間を必要とします。しかし、きちんとキャリアを積んでいけば様々な方向へ仕事を選ぶことが出来るのも醍醐味の1つです。ぜひ、あきらめずに公認会計士を目指していきましょう。