3導入編:モチベーションを維持するための先人の知恵
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ここでは公認会計士の勉強でモチベーションを維持する方法について解説しています。
公認会計士の仕事への使命感を持つ
公認会計士の使命(公認会計士法第1条)
公認会計士は、監査及び会計の専門家として
独立した立場において
財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより
会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り
持って国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。
とあります。監査、会計の専門家として、日本の経済活動の基盤を支えるという使命を持っているのが公認会計士なのです。たとえ監査法人の一員でも、あくまでも独立した立場で公正性と信頼性を確保するというのが公認会計士法にも定められています。
専門性が高く、公認会計士にしかできない役割があるというのが大きな魅力といえます。監査とは、決算書が正しいかどうかチェックし、意見することです。上場企業などは、会社法や金融商品取引法の規定で、監査を受ける必要があります。また、企業だけではなく、監査を必要とする学校法人、公益法人、その他事業体なども含まれます。
その目的は「株主、債権者、投資家の保護」のためであり、上場企業にとっては、どのような業績を出したか、どのような資金の流れがあったかなどを四半期や年度末などに決算書として開示します。これは企業側の責任であり、義務でもあります。このように重要な決算書の数字が正しいか、企業の資料などを見ながら確認していくのが公認会計士の仕事です。
企業側にとっても、決算期などに監査法人が入る期間というのは、「襟を正す」期間でもあります。公認会計士は、会社等が公正に事業活動を行うために必要不可欠な存在であり、それは日本経済の発展にも欠かせないものなのです。公認会計士が果たす役割は大きく、使命感と責任感を持って取り組むべき意義ある仕事と言えるでしょう。
「監査、会計のプロとして、専門的な仕事ができるようになるための知識を身につける期間なのだ」
長期間まとまった勉強時間が必要な公認会計士の勉強へのモチベーションを支えるのは、やはり公認会計士という仕事の使命を深く理解し、共感することから始まると思います。
「お金のため」「一生ものの資格だから」「周囲の人から一目置かれるような凄い資格だから」という目先の理由だけでは、厳しく長い公認会計士への道を切り開くことは難しいと思います。また、公認会計士になった後も、実際にはさまざまな苦労や困難も待ち受けています。普通のサラリーマンよりも高収入と言われていますが、監査法人での仕事は激務ともいわれ、決して収入の良さだけでは語れない部分もあります。
公認会計士になりたい理由を明確にする
日本公認会計士協会が2014年に実務候補生に行ったアンケート(※)では、公認会計士を志望した理由で最も多かったのは「スペシャリストであるから」(24.1%)であったそうです。幅広い内容の資格試験の勉強を通して、高度な会計や法令関係の知識が身につき、仕事に直結するということ。実際に公認会計士になってからも、生涯専門性を高めていくことができるからという意見が多かったようです。
次が「高収入であるから」(14.6%)という人も多くいます。実際、監査法人では20代でも800万円〜900万円、30代で1000万円を超えると言われています。独立してさらに高収入の可能性もあることから、やはり安定した人気があります。
そして、ほぼ同数で「社会の役に立つ、やりがいのある仕事だから」(13.8%)です。公認会計士の使命の部分でも触れましたが、公認会計士は使命感と責任感を持って取り組むべき、意義ある仕事ですから、そこに魅力を感じる人も少なくないようですね。
女性が長く働くことができる仕事だからという声もありました。全公認会計士のうち、女性の割合も次第に増えつつあるのだとか。結婚、出産、育児などがきっかけで、仕事に復帰できない状況になってしまうことも多い女性ですが、専門性の高い資格を持ち、経験も重ねていけば、再度復帰することも可能です。
実務候補生の主な志望動機を見てきましたが、皆さんはいかがですか?公認会計士になりたい理由は一つではないでしょう。このどれもそうだ、さらにこんな理由もあるという方も多いと思います。志望動機を見ていると、どれも生涯仕事を続けていくうえで大事なことであると思います。自分は今、一生関わりたい仕事を身につけるための勉強をしているんだと思えば、モチベーションを維持できるのではないでしょうか。志望動機を全て書き出し、毎日見てから勉強を始める。精神的な部分がモチベーションを支える原動力となるでしょう。
受験勉強を楽しむ感覚を身につける
公認会計士の勉強は1年以上、場合によっては3~4年かかるかもしれない長期戦です。長い間モチベーションを維持し続けるのは大変なことでしょう。
しかし難しく考えることはありません。ちょっとした心がけで受験に対する意欲をそのまま保つことは可能だからです。
では一体どうすればよいのか。一言で表現するなら公認会計士の受験を楽しむことです。勉強なんて苦しいことしかないと思うかもしれませんが、意外と楽しみを見つけることができるものです。
例えば勉強で使うボールペンは期間が長くなるとすごい数になると思いますが、これを捨てないでとっておきます。溜まったボールペンは自分が頑張った証ですから眺めているだけで自信が湧いてくるはずです。
また苦しくなったら合格した時の自分の姿をイメージしてみましょう。そこには自分の受験番号を見て飛び上がって喜んでいる光景があることでしょう。そのために勉強していると思えば気持ちが楽になるはずです。
それでもこのままで大丈夫かと不安になることがあるかもしれません。そうした時は無理に抵抗するのではなく一旦不安を受け入れてみましょう。
その不安は自分が目標を決めて受験勉強をしているからこそ生まれるもので、普通の人には味わえない感覚です。貴重な経験をしていると思えば不安すら楽しめるようになるはずです。
自分の世界に閉じこまらず周囲に感謝する
毎日勉強ばかりしていると、だんだんそれ以外のことに目が向かなくなり視野が狭くなることがあります。
答練でいい点数をとろうと頑張ったり、毎日割り当てた学習スケジュールをこなすだけだと、それ自体が目標になってしまい、ちょっと成績が落ちると絶望感に覆われてしまうかもしれません。
そのような時は初心に戻って考えてみましょう。自分はそもそもなんで公認会計士を目指すようになったのか、きっかけや原点を思い出してみてください。
毎日苦しみながら勉強しているのはもちろん自分の合格のためですが、自分ひとりの力だけでは合格を手にすることは難しいはずです。
家族や友人など周囲の理解と支えがあって始めてなし得るものだと考えると、その人たちに感謝の気持ちも生まれてくるでしょう。自分が自分が…と思うことはやめましょう。
あまり自分だけの世界に閉じこもってしまうと、目標を見失ってしまう可能性があります。協力してくれる周りの人たちのためにも頑張っていると考えるとやる気も出てくるでしょう。
公認会計士の勉強を続けていると、自分の趣味の時間が無くなったり、友人同士で旅行するなど楽しみを犠牲にしてしまうことが少なからずあることでしょう。
しかし犠牲にしたものが大きければ大きいほど合格した時の喜びも大きくなるはずです。合格するために犠牲にしたものは合格によって必ず取り返せると考えればマイナスの心もプラスにできるでしょう。
受験勉強内容、時間を表でチェックする
公認会計士の試験科目は多く、短答式試験と論文式試験があります。短答式試験では「財務会計論」「管理計算論」「監査論」「企業法」の4科目、さらに短答式試験に合格すると受験できる論文式試験では「会計学」「監査論」「企業法」「租税法」と、選択科目のうちいずれか1科目の合計5科目を受けることになります。そのため、受験科目はのべ9科目という計算になります。
この選択科目のうち、どれを選択するかは合否を左右する大切なことです。選択科目の経営学、経済学、民法、統計学があるのですが、それぞれ必要な勉強時間が異なっています。経営学や統計学は200〜250時間ともいわれていますが、民法は450時間、経済学は500時間必要といわれています。実際、選択科目では経営学を選択する学生が多いということです。一方統計学は経営学と勉強時間は同じくらいですが、専門性が高く、大学で学んでいたなど、特別なことがない場合は避けたほうが良い科目、と言われています。実際に公認会計士になったあとも必要な知識として経営学を学んでおくことを勧められるケースが多いようです。
短答式試験は年2回あります。これに合格すれば、毎年8月にある論文式試験に進みます。しかし、短答式試験の合格で、以降の受験を免除される期間は2年間です。また、科目それぞれに合格基準点があります。
ですから、あらかじめそれぞれの短答式試験科目の対策はもちろん、それと同時進行で論文式試験の科目も対策を進めておく必要があります。しっかりとした学習計画を立てることが重要です。
多くの科目があり、それぞれ多くの時間を必要としますので、一つ一つ消化していくつもりで、計画的に進めていかなければなりません。その長い道のりを長期的に、だけではなく、短期的に捉える視点を持つことも大切です。
毎日の勉強を計画表にして、さらに終えたところに色を塗るなど、どれだけ勉強したかを記録していくことで、日々のモチベーションを支えてくれます。そしてそれが蓄積して、後から「こんなにやってきた」という自信にもなります。勉強の計画表は長く、膨大な勉強量を記録すること。きっと無駄にはならないはずです。
情熱を持ち続ける
また、公認会計士になった後も、さまざまな会計のルールや制度などが変更されていくので、「生涯勉強」という気持ちで知識を蓄えていかないと続けられない、と現役で活躍されている公認会計士の方々も口を揃えます。
公認会計士の資格試験の勉強は、これから会計、監査のプロとして日本経済を支える仕事に就くための知識の基礎作りです。これから生涯、この仕事を続けていく、その情熱を持ち続けることこそが、モチベーション維持の源となるでしょう。